自分の実家に帰って両親と同居することになったり、実家を自分たちの住みやすいようにリフォームしたりと実家のリフォーム工事を検討される方も多くおられると思います。
そもそも親名義のまま子供の資金でリフォームした場合、何か問題が起こらないのでしょうか。
税金など予想外の費用が発生してしまうことも考えられるので、しっかりと調べる必要があります。
実家を大規模リフォームするとなると、それなりの大きなリフォーム費用がかかります。
出来る限り負担を抑えられるようにするにはどうすれば良いのか、メリットやデメリットについても解説します。
親名義のままリフォームする際の問題点
子供が親名義の物件をリフォームする場合、次のような問題が出てくるので解説します。
問題点①リフォームのローン減税が受けられなくなる
親名義のままリフォームすると、子供は住宅ローン減税が受けられなくなります。
子供が実家をリフォームする場合は、リフォームの工事範囲が大きくなり高額の費用がかかると想定されます。
その場合、住宅ローンやリフォームローンなど多くの方がローンを組むことを検討されるでしょう。
親の年齢が高齢でローンの借り入れが難しい場合が多いため、子供がローンを組むケースがほとんどです。
しかし、リフォームする場合に住宅ローン控除を受けるためには、決められた控除条件や工事内容があります。
その条件の中には自己で所有するか、もしくは自分が住んでいることが条件として挙げられます。
これに該当しないと住宅ローン減税の対象になることができません。
従って親の名義のままでは、子供が住宅ローン控除は利用することができないということになります。
問題点②贈与税が発生する
親名義のまま子供がリフォームすると贈与税が発生します。
贈与税は、年間110万円以上の財産を個人から譲り受けた際に発生する税金のことを指します。
親名義の物件を子供が資金を調達しリフォームした場合は、子供から両親へ贈与したとみなされることになるため両親側に贈与税が発生すると考えられます。
リフォーム費用が、年間110万円以内の小規模なリフォームであれば基本的に贈与税の対象とはなりません。
この贈与税の問題はリフォーム費用をどちらが支払うのか、またリフォーム費用はどれぐらいかかるのかが重要になってくるので、事前に家族で相談しリフォーム会社にもアドバイスをもらうことが大切です。
贈与税を節税する対策
贈与税を節税する対策の一つとして、名義変更を行ってからリフォームする方法が挙げられます。
どのような方法があるのか解説します。
対策① 親から子供に売却して名義を変更する
子供が親名義の物件をリフォームする際に、贈与税対策として最も考えられる方法が親が子供に家を売却するという方法です。
この場合リフォームするのは建物なので、建物のみの購入で土地まで購入する必要はありません。
実家の建物は築年数も経っていることが多いため、建物の資産価値は年月が経つごとに下がってきます。
その建物は固定資産評価額が低いため、その評価額で実家を買い取ることができます。
土地は親名義のままで建物は子供名義に所有権が移ることで、子供がリフォーム費用を出しても贈与税はかかりません。
また反対に、築年数が経っていない新しい築浅物件に関しては固定資産評価額が高いため、親から子供に家を売却した場合、親に譲渡所得税が課せられることもあります。
築年数が浅い物件に関しては注意が必要です。
他には不動産売買というのは、物件の取引価格を買主と売主で決めることができます。
しかし、たとえ親子間であっても相場より著しく安い価格で取引することは難しく、売買ではなく贈与とみなされ贈与税が課税させられることもあります。
買主と売主が価格を決められるといっても都合の良い安い価格にはできないのです。
そのため適正価格で売買することが、最も節税することにつながるのではないでしょうか。
対策②親から子供に贈与して名義を変更する
名義を変更する方法として、親から子供へ実家の建物のみを贈与してもらう方法があります。
この方法は贈与税の課税対象ですが、節税対策として考えられます。
築年数が経過している建物の場合は建物の固定資産評価額が低いため、そのリフォーム費用に関わる贈与税に比べると少額の贈与税で済むことがほとんどです。
したがって、親から子供へ売却譲渡しないのであれば、少額の贈与税を納税して建物を贈与してもらうことも一つの方法です。
もし実家の評価額が高ければ、相続時精算課税制度を上手く活用することも可能です。
相続時精算課税制度とは60歳以上の父母、又は祖父母から20歳以上の子や孫への財産を生前贈与する際に利用できる制度です。
この課税制度を適用すると、建物の評価額が2,500万円以内であれば贈与税を非課税にすることが可能です。
しかし、その代わりに贈与者である親が亡くなった場合には、このときの贈与財産と他の相続財産を合算して相続税を計算することになります。
つまり贈与時には贈与税がかからないけれども、相続時に相続税が課税されるということです。
この制度を利用する際は、リフォーム業者や税理士など専門家に相談し検討することが必要でしょう。
対策③親と子供の共有名義にする
リフォームの契約をする前に、贈与税の基礎控除額以下の持分の贈与を行います。
リフォーム費用に見合う持分の名義を親から子供に変更して、共有名義で登記する方法があります。
いわゆる親と子供の共有名義物件となるわけです。
共有名義の割合は、親名義物件の時価と子供が負担するリフォーム費用のバランスを考慮しながら、ちょうど良い割合で共有名義にすることが理想的です。
そうすることで住宅ローン控除も適用され、贈与税も発生しないのでお得にリフォームをすることができます。
どの対策が1番おすすめ?
どのパターンを選ぶにしても、親から子供へ建物のみを売却する譲渡を選ぶのか、贈与するのかどちらがお得なのかは建物の評価額やリフォームにかかる費用により変動します。
住宅ローン控除を受けるのであれば、少なくとも建物の名義の何%かは子供に移さなければなりません。
そういう意味では、建物全てを贈与するのかリフォーム費用分のみ贈与して共有名義にするのかは迷うところだと思います。
住宅ローン控除と節税を総合的に考えた上での判断が必要であり、ケースバイケースとなります。
親から子供へ名義変更するメリット・デメリット
実家を親から子供へ名義変更するメリット・デメリットを解説します。
名義変更のメリット
実家を親から子供へ名義変更するメリットは、ローンが組みやすくなることです。
実家をリフォームするために生前贈与することによって、リフォームローンの申込者の年齢が若くなるためローンの返済期間を長く設定することが可能です。
金融機関の審査も通りやすくなるため、希望額の借入額が可能になるというメリットがあります。
子供が実家の所有者となり、住宅ローンやリフォームローンの申し込みをする際にはほとんど問題なく審査はスムーズに通るでしょう。
また住宅ローン控除が適用されることで、年末にローン残高を算出し残高の1%が所得税から控除されるのでそのメリットも受けることができます。
名義変更のデメリット
実家を親から子供へ名義変更するデメリットは、贈与か相続で税額が変わることです。
親が亡くなった際に親名義の不動産を相続する場合には、相続人に対して相続税が課せられます。
相続税は1,000万円以下では10%の税率がかかり、1,000万円から3,000万円までは15%の税率がかかります。
その控除額は50万円と定められています。
また、贈与税は300万円以下の贈与に対して15%の税率が課せられ控除額は10万円です。
このように実家の名義を変更し所有者の移転登記をする場合のデメリットは、生前贈与か相続かで請求される税金が大きく変わってくるというところです。
名義変更の際にかかる費用
不動産の名義変更には、物件費用以外にもさまざまな費用が発生します。
費用の内容と計算方法について表にしました。↓
名義変更にかかる費用の内容 | 計算方法 |
登録免許税(所有権移転登記) | 固定資産税評価額の2% |
不動産取得税 | 固定資産税評価額の4%(特例が適用される場合は3%) |
登録免許税(ローンのための抵当権設定登記) | 固定資産税評価額の0.4%(特例が適用される場合は0.10%) |
手続きに伴う諸費用(司法書士の報酬など) | 費用相場は約10万円前後 |
固定資産税 | 固定資産税評価額の1.4%(標準税率) |
都市計画税 | 固定資産税評価額の0.3%(制限税率) |
実家に住宅ローンの残債がある場合のリフォームについて
実家に購入時の住宅ローンの残債があってもリフォームローンの借り入れはできます。
しかし、住宅ローンは一人で一契約が原則となっているので、二本目の住宅ローンを組む事は不可能です。
この場合は、住宅ローンの借り換えを行えばリフォーム資金と合わせて融資を受けることができます。
ただし借り換えの契約時には、保証料や手数料など別途かかる費用があるので注意が必要です。
またローンの借り換えは何回でも可能ですが、返済年数が短かったり申し込み者が高齢の場合は審査が通りにくいことがあります。
この場合は、ローンの返済を子供が引き継いで支払う親子リレーローンを利用する方法があります。
当面親が返済を始め、やがて返済が子に引き継がれていくことが前提のローンなので、返済期間を長期に設定できるのがメリットです。
ただし取り扱っている金融機関は、限定されているため事前に調査しておくことが必要です。
まとめ
今回は、親名義のまま実家をリフォームする際の問題点やその対策について解説しました。
どの方法が最も利口に節税できるのかは、それぞれ条件によって異なります。
リフォーム費用や建物の評価額により変動するので、出来るだけ無駄な税金を払わずに済ませたいものです。
知識のあるリフォーム業者のアドバイスや専門家の税理士に相談することをおすすめします。
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